HPC® by kooge.co ®

市民の記憶を引き継いだ、
コンクリート製の高欄。
HPC®だから可能な、軽さと薄さ。

公共工事で橋の高欄に利用

投資用マンションブランド「ZOOM横浜関内」の外観写真

INTRODUCTION

埼玉県吉川市と越谷市の間を流れる中川に架かる、吉川橋。老朽化した橋の架け替え事業を埼玉県が発注し、橋の高欄部分に、郡家コンクリート工業製の HPC®が採用された。提案したのは、ランドスケーププロダクツなどを製造する株式会社風憩セコロ。全体の指揮を執った東京支社長の渡辺博氏に、 HPC®採用の背景やメリットについて伺った。

株式会社風憩セコロ 取締役東京支社長 渡辺博さん<

株式会社風憩セコロ
取締役東京支社長 渡辺博さん

https://fukei-s.com/

株式会社風憩セコロ共同経営者。1961年、福岡県生まれ。1999年に、100%屋外100%公共財空間に設置されるメーカー・株式会社風憩セコロ設立。風憩セコロに関するすべての製品の企画、開発、マーケティングに関わる。全国に納入された風憩セコロの作品の、実績写真撮影が趣味。

土木のプロも驚く、薄さと軽さ

吉川橋を実際に見て、コンクリートとアルミの組み合わせが美しいと感じました。

渡辺:ありがとうございます。コンクリートとアルミを合体させた、こういう意匠のものはおそらく日本初だと思います。コンクリートは重いので、ウェイトとして基礎部分に使うのが普通です。意匠となる部分にコンクリートが使われるのは、橋においては極めて珍しい。薄くできて、結果軽くできる HPC®だからこそ実現できた意匠ですね。施工を担ってくれた土木のプロの皆さんも驚いていました。コンクリートで、こんなことができるのかと。

軽いことは施工時のメリットもありますか?

渡辺:ありますね。通常のコンクリートであれば、クレーン作業が必須です。でも今回は HPC®でしたので、1スパン分なら2人で運べました。アルミの場合とほぼ同じ労力で施工できましたね。鉄の場合は現場で溶接が必要になりますが、 HPC®は事前に固定方法を決めておけば、アルミと同様にボルトで締めて固定できます。これも、作業負担の軽減につながりました。施工性の良さは総工費にも大きく影響するので、大きなメリットです。

事前にコンクリート側にインサートを埋め込んでおき、アルミ側からボルトで噛み合わせて固定する。サイドはアルミに差し込んで、コーキングで固定するだけ。

改めて吉川橋の概要を聞かせてください。

渡辺:吉川橋は、1933年に竣工した歴史ある橋です。近年の周辺人口の増加が引き起こす渋滞緩和のために、元あった橋の30m下流側に新設するという計画が持ち上がり、2013年に着工。片側2車線で歩道もあるため、幅員9m、長さ159mという大きな橋が完成しました。

どんな経緯で、 HPC®が採用されたのでしょうか?

渡辺:この橋は、市民生活に根付いた、市民に長く愛されてきた橋。ですから、架け替え時には過去の橋の意匠をいかに引き継ぐかが、テーマとなりました。そして以前の橋の素材にコンクリートが使われていたんです。当時は車線数も少なく、短い橋だったのでコンクリートで可能でしたが、今回の幅と長さで通常のコンクリートを使ったのでは、維持できない。そこで、薄くて軽い HPC®を採用することになりました。

先代(3代目)の吉川橋の様子。ホーローにデジタル印刷を施し、現在の橋に埋め込んである。これを見ると、欄干部分はコンクリート製であることがわかる。

コンクリートを選ぶことは、掛け替えにあたり必須条件だったと。

渡辺:そうなんです。実は、私たちの最初の提案では、高欄部分にメタルやポリカーボネイトを使っていました。しかし、埼玉県側の強い要望として、アーチ形状とコンクリート素材の両方を過去の橋から引き継ぎながら現代の橋にしたい、と伝えられました。そこで、重量的にもクリアできるアルミとコンクリートを組み合わせた高欄を提案しました。アルミで構成すると、コンクリートの厚みが55mm以下でなければ収まらず、通常のコンクリートでは鉄筋に対するかぶりが必要なため、無理でした。そこで、 HPC®の出番となったのです。

取り付け詳細図。アルミにコンクリートを差し込み、緩衝材とコーキングで処理。そのため、コンクリート幅は最小部分で55mm以下である必要があった。

実際に HPC®を発注されてからは、どんな流れでしたか?

渡辺:発注の前にサンプルをいくつか作ってもらって、クライアント側にテクスチャーの確認をしてもらいました。骨材はどうするか、洗い出しや仕上げはどう処理するか。そこで双方が納得いったうえで進められたので、発注後の不安はなかったですね。今回は、白御影両面ショットブラストで仕上げて、3代目の橋と洗い出しの表情まで似せています。

コンクリートを使ってチャレンジするなら

HPC®の存在を知ったきっかけは何ですか?

渡辺:郡家さんとの付き合いは、以前からありました。ベンチなど、いくつか一緒にプロダクトも作って。 HPC®自体は、東京で行われた展示会で初めて見て、興味を持っていたんです。薄いコンクリートに負荷をかけたら、ヒビが入って折れるのが普通ですが、 HPC®は靭性があり、しなるため、人が乗っても折れない。そんなユニークな展示がしてあって、いつか使ってみたいという思いがありましたね。

プレストレスによる圧着効果と、混入したファイバーの力で、従来のコンクリートにはなかった靭性が出るのも HPC®の特徴。

郡家コンクリート工業に対しては、どんな印象をお持ちでしたか?

渡辺:私はもともとマテリアルフェチなところがあって、面白いマテリアルをいつも探しています。コンクリートという素材の可能性はもっともっと掘り下げられると思っていますが、その追求を一緒に取り組んでくれるコンクリート屋さんというのは、なかなかありません。生コンやJIS規格品を大量生産しているコンクリート会社の場合、規模が小さくて実験的なことは、普通はやりたがりませんよね。でも郡家さんは、「kooge.co」のサイトにあるように、テクスチャーをいじったり、いろんな挑戦をしています。アイデアをくれるし、対応も早い。だから、コンクリートで何かチャレンジしたいことがあるなら、頼もしい存在です。

それで今回は、郡家コンクリート工業が作る HPC®の特徴を生かしきったと。

渡辺:そうですね。厚み、軽さ、アルミとの組み合わせ、すべてがうまく噛み合いました。事前にコミュニケーションをしっかり取り、進められた結果だと思います。

コンクリートと別素材を組み合わせた製品開発

今回使ってみて感じた、 HPC®のメリットとデメリットを教えてください。

渡辺:やはり薄さ、軽さは大きなメリットです。それから、カーボンニュートラルの観点でもメリットがありますね。薄くできるということは結局、コンクリートの使用量が少なくて済むわけですし、運搬時も軽いことで10tトラック10台分が8台まで減らせるかもしれない。それは、CO2排出削減という点でもいいですよね。逆にデメリットは、価格でしょうか。通常のコンクリートや金属と比べれば、どうしても割高ではあります。そこを、どう考えるか。高くても、今回のようにコンクリートという素材を使うこと自体に意味があるのなら採用すべきだし、他には替えられない良さがありますからね。

HPC®や、郡家コンクリート工業への今後の期待を聞かせてください。

渡辺:実はいままた、郡家コンクリート工業さんと一緒に、ある商品開発を進めているんです。私たちのソーラー照明や金属加工の技術と、郡家さんのコンクリート加工・処理技術を生かした製品です。開発のやりとりの中でも、きめ細かく対応いただいて、過程から楽しみながらできています。早く製品化して、世の中に広められるといいですね。私たちはメーカーですから、私たちの製品にコンクリートを組み合わせる形で、コラボできる可能性はまだまだあると思います。ともに良い製品作りに取り組み、意外なものやユニークなものを世に出していければと思います。

本日はどうもありがとうございました。

郡家コンクリート工業 常務 川本富二男

郡家コンクリート工業
常務 川本富二男

渡辺支社長との出会いは、2018年のビッグサイトでの展示会にお越しいただいたことがきっかけです。それ以来、いくつかのコラボ製品を作ったり、弊社の工場へ社員さんとともに何度か訪問いただいたり、私が神田の事務所や埼玉の工場に伺ったりと、関係を続けていただいています。

吉川橋のプロジェクトの始まりは、特に印象的でした。突如、コンクリートの破片が支社長より送られてきたんです。それが、3代目の吉川橋で使われていた洗い出し仕上げの破片だったんです。よく聞いてみると、高欄として HPC®を使い、両面洗い出し仕上げで作れないかとの相談でした。検討を重ねましたが、 HPC®の場合fc=60N/㎟と高強度コンクリートのため、翌日脱型後に洗い出し仕上げをするのは不可能で、洗い出し仕上げによく似たショットブラスト仕上げを提案してモックアップをいくつか作成し、確認していただくこととしました。十分な準備期間があったので詳細な打ち合わせができ、製作にも余裕をもって取り掛かることができました。特注品のショットブラスト加工は、弊社スタッフにとってはなかなか過酷な作業でしたが、検査が通りアルミの飾りが取り付き出荷準備まで整うと、達成感が湧いてきたのを覚えています。2021年10月には、偶然にも現場近くで HPC®の耐火実験の予備試験を行う機会があり、株式会社 HPC沖縄の関係者の皆さんと現地を訪れました。図面から想像するよりも遥かに大きく、伝統も取り入れながら新しい時代を感じる4代目吉川橋を、惚れ惚れと見学してきました。

遠く鳥取の地から地域の歴史に残る橋の架け替え工事に関わらせていただいたこと、その御縁をいただいた株式会社風憩セコロの渡辺支社長に感謝いたします。

寸法や表面仕上げ、取り付け仕様など、
用途に応じてきめ細かく対応いたします。
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